吉森みき男先生の野球マンガ「しまっていこうぜ!」を勝手に語る。アニメ化はされていません。そこそこヒットしたけど全く有名ではないな。
週刊少年チャンピオンに連載
連載は1972年から1980年。コミックス全26巻を持って完結しました。
チャンピオンの野球マンガといえば水島新司先生のドカベン。スーパースター軍団が幾多のライバルに勝ち抜く物語でした。
一方、しまっていこうぜ!はスーパーな選手はおらず秘技も魔球もない地味な中学野球の物語。ちばてつや先生のキャプテン・プレイボール系統の野球マンガでした。ジャンプに対抗していたのだろうか。
陰キャな主人公がふとしたきっかけで中学野球の世界へ
主人公は沢村大介。名前はかっこいいがこれといった取り柄がない帰宅部の中学生。
ふとしたことで野球少年の池田広に誘われて野球部に入部する。小柄だけど野球が好きで熱い心を持っている池田に引っ張られて沢村は野球にのめり込んでいく。
しっかり女房役となる仲間がいて成長する主人公。やっぱりこれはキャプテン時空。
ド素人だった沢村が入部してすぐにピッチャーをやるのはちょっとご都合主義ではあるが。
そんな主人公がピッチャーをしている野球部は強くない
そらそうだ。
池田だけでなく仲間にも支えられて目一杯練習に打ち込む沢田だが世の中そんなに甘くない。
中学野球の強豪校の主力3年生は甲子園の一歩手前の力を持っている者もいる。ぽっと出で中学で投げはじめたピッチャーで勝ち抜くのは正直無理。
主人公補正(まぁマンガだし)で結構勝ち進むんだけど都大会で負けてしまう。
そんな野球マンガ。
リアルな苦しく辛いところが楽しいマンガ
なんか何がおもしろいのと言われそうなことを書いてしまいました。
結論から言うと野球少年が読むとおもしろい。言いかえると野球少年以外には多分おもしろくない。
ここまで黙っていましたが、沢村が野球部に入った理由は池田に誘われたというのは表向きで好きな女子に見てもらいたいから。野球少年なら誰しも分かる話。
苦しい練習。だけど皆がやってるし自分もがんばる。そして自分の技術向上を感じつつ自分の技術はそれ程すごくないことも知る。
負けて悔しい。しかし負けたんだから仕方がない。全国大会に行けるのは本当にすごい奴ら。
野球少年には分かりすぎる。野球少年にとっての名作。
最後に作画の話。頻繁に出てくる沢田の投球を正面から描く絵など吉森先生独特の表現で野球の動きがシンプルに描かれている。
今後の野球マンガを想う
昔は皆が野球少年だったから野球にひたすら打ちこむ話で読者を集められた。今は野球少年が減ったからこういう作品は多分もう流行らない。
あだち充先生の野球中心の学園マンガやスーパースター路線の長編MAJORといった大ヒット作はある。
投球制限、科学的トレーニングという現実を前に熱くて無茶もある野球マンガを描くのは難しくなった。一縷の希みは大谷選手。マンガみたいな世界が現実の野球でもありうると皆を驚かせた。
野球を知るものが少ない10代20代、これから新しい野球マンガが開拓されるだろうか。
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